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経済評論家 舟泊良章
いつか来た道に戻るのか
将来像なき総合経済対策
米大統領選で民主党候補に決まったバラク・オバマ氏は政権交代に向けたキーワードとして事あるごとに「チェンジ(改革)」を訴えている。米国では企業などが苦しい状況に陥って「再建」や「リストラ」が必要な場合でも、後ろ向きな表現を避けて「チェンジ」の断行を強調する。こうした前向きな変革姿勢は日本経済にこそ必要なのだが、先に政府・与党が決定した総合経済対策は選挙目当てのばらまきや、結果的に改革の先延ばしにつながりかねない施策ばかりが目立つ。

日本の財政状態は先進国の中で最悪。バブル崩壊後、国債を財源にした公共事業や減税などの景気対策を断続的に実施したためだ。それでも、この夏に戦後最長とされる景気拡大が終わって後退局面に入ったことが確実になると、政府・与党は総合経済対策の実施を決め、財務省は補正予算の編成に入った。予算額は1兆8000億円、事業規模は11兆5000億円が見込まれている。

経済対策として、燃料・原料高騰の影響緩和に主眼を置いた、輸入小麦の売り渡し価格引き上げ幅の圧縮、高速道路料金の値下げといった項目が並ぶ。省エネ推進や農業強化といった将来に向けた施策も入っているが、事業規模11兆5000億円のうち9兆円は経営悪化した中小企業の資金繰り支援を目的とした融資。資金繰り融資は、新たな事業への挑戦を支援するのではなく、いわば既存事業の「延命」に軸足が置かれている面は否めない。残る1兆5000億円で将来に明るい展望を開くのはどだい無理な話だろう。

◆つかみ金

時代とともに経済・社会が変化し、人々に必要とされる産業や事業も変遷する。例えば、第二次大戦後に花形だった砂糖会社や上水道建設が現在も同じ地位を占めているわけではない。

今、政治に求められているのは、日本の将来を見据えて社会・経済の新たなビジョンを描き、企業の構造や事業の転換を後押しするといった形の「チェンジ(改革)」に主眼を置いた経済対策だと強調しておきたい。

悲しいかな、今回の総合経済対策にはそんな視点がまったく感じられない。

この総合経済対策には秋の臨時国会に提出する補正予算で手当てする事業とは別に、所得税・住民税の定額減税も盛り込まれた。減税規模は年末の税制改正と一体的に決める予定だが、次期総選挙をにらんだ人気取り、いわゆるばらまきと揶揄(やゆ)されても仕方がないだろう。

今回の減税は単年度1回限りの措置として実施する予定だが、そんな「つかみ金」のような減税が今、必要とされているのだろうか。多くの国民が求めているのは、年金や医療、介護などの充実を通じた将来不安の解消だ。

公明党が主張する大規模減税となれば赤字国債の発行は避けられない。これが許される財政状況でないのは明らかで福田康夫首相は赤字国債の発効を否定したが、小規模な減税に景気浮揚効果があるはずがない。それでも実施しようとする姿勢を目の前にすると、日本の財政を急速に悪化させた、いつか来た道に逆戻りする「とば口」に立っているような気がしてならない。


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