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| 大国ロシア復活の号砲か
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| 日本ではなじみが薄いが、ヨーロッパ・ロシアの南には黒海(地中海につながる内海)とカスピ海(巨大な塩湖)が広がり、このふたつの「海」に挟まれる形で、ロシアから中東に下る細長い陸地がある。この狭い土地には旧ソ連の支配を脱したグルジア、アゼルバイジャン、アルメニアの3国が独立国として存在しているが、国境は便宜的なもので、バルカン半島に似た人種のモザイクの様相を呈して、政情は常に波乱含み。しかし、何の因果か、この地域は石油、天然ガスの生産と輸送の要衝なのだ。ここで、不可解なグルジア紛争が突如発生した。 まず、グルジアとアゼルバイジャンは、旧ソ連時代の強権支配を忌み嫌い、反露・親欧米的な政権の国。グルジアは米国の支援を背景に、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)への加盟を表明しており、ロシアは近年、強く警戒していた。 欧米がこの両国を重視するのは、アゼルバイジャンのバクー(カスピ海岸で大規模油田がある)から、グルジアを経由して黒海に出る輸送路が確保でき、さらにグルジアから南に曲がってトルコを通り、地中海へ直接出るルートも可能になるからだ。さらにいえば、旧ソ連から自立した中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンは極めて有望なエネルギー資源地帯なのだが、これらの国がカスピ海の東側に接しているため、中央アジア―カスピ海―アゼルバイジャン―グルジア…地中海というコースで、石油やガスを得ようとする思惑はただならぬものがあった。 例えば、2006年には、バクー―トリビシ(グルジアの首都)―ジェイハン(トルコの地中海の港)を結ぶ「BTC原油パイプライン」が開通している。欧米に日本の資本も参加し、輸送能力は日糧100万バレル。また、バクー―トリビシ―スプサ(グルジアの黒海岸の港)にもパイプラインがある。いうまでもなく、親露地帯を避けていったん黒海岸に運べば、海路でボスボラス、ダーダネルス海峡を通って地中海からEU主要国にエネルギーを供給することが可能だ。 旧ソ連から脱した国は、豊かな欧米型の経済社会になびき、一時は疲弊し切ったロシアとどんどん距離を置くようになった。しかし、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国4カ国の総称)の一角としてロシア経済が立ち直り、しかも、高騰する資源を豊富に持つ優位性を盾に大国として復活する中で、今回の紛争が起きた。 復活途上とはいえ、強大なロシア軍に、小国グルジアが対抗できるはずはないのだが、グルジア国内の親露自治州にグルジア政府が武力を行使したのは、何らかの理由でロシアが介入できない、という大きな読み間違いでもあったのだろうか。結果論だが、ロシアはEU議長国フランスの調停などどこ吹く風でグルジア国内に大規模な軍隊の駐留をやめないし、米国艦艇が黒海に出動しても動じる気配はない。 それどころか、ロシアがグルジア領内のパイプラインを空爆する可能性が否定できず、バクーから黒海、地中海に伸びるパイプラインは停止を余儀なくされ、バクーからの鉄道輸送ルートもグルジア領内のゴリに進駐したロシア軍に押さえられた挙句、鉄橋を爆破されてストップしている。EUはロシアへのエネルギー依存状態から脱却するすべを、カスピ海、中央アジア地域に求めたが、その戦略の脆弱さがグルジア紛争で一気に露呈した。紛争勃発後、EUの姿勢はロシアが本当に機嫌を損ねることを避け、恐る恐るの弱腰に見える。ドイツにいたっては、EUの結束はそっちのけでロシアとの協調維持を重視する姿勢を隠さない。米露が黒海で直接軍事衝突する可能性など考える余地もないだろうが、米国がアフガニスタンとイラク以外の地域で小競り合いをする余裕がないことは、軍事の素人でも想像がつく。 今回の紛争がなくとも、ロシアはカスピ海、中央アジアのエネルギー支配に先手を打っていたらしい。今年7月、ロシアはトルクメニスタンから買う天然ガスの価格を60%も値上げし、その見返りに、今後20年、トルクメニスタンのガスは全量ロシア経由で輸出することで合意していたという。カザフスタン、ウズベキスタンというカスピ海の東の資源国とも同様の契約を結ぶとの観測が流れている。欧米はロシアに押されっぱなしなわけだ。 改めて、資源大国、軍事大国、プーチン流の独裁的国家運営の組み合わせは背筋が寒くなる。グルジア紛争の収拾策は国連などの大舞台で議論されそうだし、そこで誰が最終的な勝者となるか予断は禁物かもしれない。だが、ロシアの逆転負けは想像しづらく、なぜグルジアのサーカシビリ政権が正面切ってロシアと事を構えるに至ったか、今のところ謎としか言いようがない。 |
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