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経済評論家 舟泊良章
最低時給15円引き上げ
遅きに失した当たり前の措置
中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)が2008年度に最低時給を全国平均で15円程度引き上げるよう舛添要一厚労相に答申し、最低賃金が生活保護費を下回るという極めて不健全な状況はようやく解消に向かうことになった。働くよりも公的支援に頼ったほうが得をするのでは勤労意欲が削がれるだけでなく、社会負担が大きくなるばかりだ。最低賃金引き上げは当たり前の措置で、実施が遅きに失した感さえある。

◆差額の解消

最低時給の具体的な引き上げ幅の目安は7―15円で、最低賃金が生活保護費を下回る12都道府県は差額解消のための上積みも行うとしている。差額解消は7月施行の改正最低賃金法が生活保護費との整合性に配慮するよう定めているのを受けた措置だ。

この結果、2007年度の平均14円を上回る15円の引き上げが行われる。15円は時給での表示となった2002年度以来、最大の引き上げ幅。現行の平均最低時給は687円で、答申を受けて初めて700円台になる。

改正最低賃金法の施行に加え、労使の代表が参加する政府の「成長力底上げ戦略推進円卓会議」における合意も最低賃金の引き上げを後押しした。同円卓会議は6月、小規模事業所での高卒初任給の最低水準を目安に最低賃金の引き上げを目指すことで合意した。実現時期は5年後がめど。目標となる初任給の金額は明確にしなかったが、労働側が主張する「10―99人規模」の事業所の初任給が目標なら、時給755円となる計算だ。

アルバイトや派遣など非正規雇用が増加、最低賃金レベルで働く層が増えているだけに、大田弘子経済財政担当相(当時)は円卓会議の合意に関して、「消費や経済全体に良い影響をもたらすだろう」と評価した。

◆負の連鎖

「小泉改革」で日雇い派遣が解禁になるなど労働規制の緩和が急速に進んだ。緩和を受けて企業は、国際競争力の強化を掲げて人件費削減に突き進んだ面は否めず、そのゆがみが格差の拡大であり、生活保護を下回る給与で働く「ワーキングプア」の出現だった。

この状態は明らかに行き過ぎだ。

企業は人件費の削減で利益拡大が可能だが、生活保護を受けた方が収入が多いと分かっても、人々は働き続けるだろうか。生活保護費の増大は政府・地方公共団体の財政を圧迫し、将来的には増税といった形で企業や納税者に降りかかり、社会の活力が失われていく。こうした負の連鎖が起きないとも限らない。

最低賃金の引き上げは、そんな社会の到来を防ぐ第一歩だと信じたい。


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