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経済評論家 舟泊良章
タクシー規制強化は邪道
乗務員の待遇は正攻法で
タクシー業界への新規参入や増車に対する規制強化が本格化している。国土交通省は行き過ぎた規制緩和がタクシー乗務員の収入減を招いたとして、台数制限を一部地域で復活させたが、この動きには官庁の権限維持・拡大に向けた論理のすり替えの臭いが強く漂う。乗務員の待遇改善は賃金保証といった直接的な手法を用いるのが本筋。いわゆる労働者の権利と業界規制とは別次元の話のはずだ。

小泉純一郎元首相は規制緩和の象徴としてタクシー台数制限の撤廃などを行った。これを受けて全国の法人タクシー台数は20万台から22万台に増加。深夜でも乗車しやすくなるなどの効果が利用者にあった。

その一方で、タクシー乗務員の収入が減少し、中には長時間の深夜勤務をしても生活保護世以下の給与しか得られないケースが出たほどだ。

こうした状況を改善するとの理由で国土交通省は減車を含む規制強化に向けて道路運送法改正を来年の通常国会で予定している。それを控えた駆け込み参入や増車を防ぐため7月初旬、参入や増車の条件を厳しくする「特定特別監視地域」の対象を全国644地域のうち6地域から109地域に拡大した。

しかし、規制の復活によって乗務員の給与がアップするだろうか。見直すべきは、タクシー業界の歩合制給与システムだと指摘しておきたい。

大づかみに言えば、規制緩和でタクシー台数が増加して一台当たりの売上額が減少し、乗務員の収入は歩合制に基づいてダウンした。その一方で、会社側は台数増を通じた売上拡大というメリットを享受したとされる。乗務員の給与が減っても、営業する車の台数を増やせば企業の売上げが拡大する構造があるからこそ、タクシー会社が台数増大を競った面は否めず、そのしわ寄せが乗務員にのしかかったと言える。

この悪循環を断ち切る最良の策が、規制の復活であるはずがない。現在の賃金構造を温存したままで規制を復活させても、乗務員の給与がアップする保証はないし、利用者には何のメリットもないのが明らかだ。

固定給の拡大などを通じて乗務員に最低限の処遇を保証した上で、様々な運賃体系の導入など創意工夫を通じたサービス改善や経営効率化を促す形での規制緩和を押し進めるべきだ。

乗務員の待遇改善と利用者サービス向上を自由な企業努力で同時に実現できないような業者は退場してもらうのが理にかなっている。間違っても役所の権限拡大につながるような規制強化は避けたいものだ。


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