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経済評論家 小倉 豊
どうなる次世代エコカー

自動車各社による次世代エコカーの開発競争が加速している。代表選手といえる燃料電池車と電気自動車(EV)は、従来のガソリン車に比べて高額だ。しかし、環境にやさしいだけでなく、ガソリン価格の高騰が追い風になっている。エコカーは新型が国内で相次いで投入される今秋以降、次世代開発の主導権争いが本格化する見通しだ。

「今後10年を待たずに燃料電池車が普及する時期が来る」。こう強気に語るのは、ホンダの福井威夫社長だ。水素と酸素の化学反応で発生した電気を使用する燃料電池車は「究極のエコカー」と呼ばれる。

ホンダは6月、今秋から国内でリース販売する新型燃料電池車「FCXクラリティ」の生産ラインを栃木県に新設した。生産担当者は「従来の燃料電池車と比べ、部品が3割以上少ない。組み立ての工程数も半減した」と胸を張る。販売計画は、今後3年間で日米合計200台程度だが、実際の生産能力はこれより大きい。福井社長も「量産化に向けて新たな一歩を踏み出した」と強調している。

ただ、工程数を削減したとはいえ、組み立てには依然としてガソリン車の100倍もの手間がかかり、現時点で生産コストは1台数千万円以上に達するという。ホンダはコストを1000万円まで下げたい考えだが、実現へのハードルはなお高い。福井社長は「(化学反応の触媒に使う)貴金属の使用量を半分に減らさなければ」と檄(げき)を飛ばしている。

個人的な思い入れになってしまうが、1960年代に米国で試行された「マスキー法」の排ガス規制は世界中のメーカーが期限までの達成不可能とさじを投げかけた厳しいものだった。当時まだ中堅自動車メーカーだったホンダは、F1グランプリからの撤退を決め、過酷なレースで鍛え上げた技術者を総投入して、マスキー法をクリアする「CVCC」エンジンを完成。トヨタをはじめ世界の有力メーカーが、ホンダからの技術供与に頼った経緯がある。ハイブリッド車でトヨタ・プリウスの一人勝ちを長らく許していては「技術のホンダ」が泣く。福井社長の胸中、燃料電池車で逆転する反攻の火が燃えているのでは。

ホンダとは違い、燃料電池車の開発に消極的なメーカーは多い。三菱自動車の相川哲郎常務は「今はEVの普及が第一。燃料電池車の開発は凍結した」と話す。

家庭でも充電可能なEVは、水素補給施設が必要な燃料電池車と比べて普及の下地が整っているとされ、エコカー開発の激戦区だ。三菱自と富士重工業は2009年、日産自動車は10年にそれぞれ国内でのEV発売を計画している。

EVは、軽自動車をベースにしたタイプでも、価格が高級車並みになる見通し。だが、走行1`当たりのコストはわずか1円程度。ガソリン高の中、魅力は高まっている。富士重の森郁夫社長は「ある程度価格が下がれば急激に普及する」と期待を込める。三菱自は、仏プジョー・シトロエン・グループと電池などの供給で提携する考えで、今後は規模のメリットを追求する動きも加速しそうだ。

一方、日産は9月、日本メーカーで初めてクリーンディーゼルエンジン車を国内投入する。マツダも水素を燃やして走行するエコカーを今年度内にリース販売する計画。「プリウス」でエコカー分野を切り開いたトヨタ自動車は、家庭でも充電できるハイブリッド車を10年までに発売する。次世代エコカーの本命レースは混沌(こんとん)としており、当面はガソリン車を含め、複数の技術が共存していく見込みだ。


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