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経済評論家 舟泊良章
原油高騰、悪なのか
低炭素社会への近道では
原油価格が一時、1バレル=140jに迫るレベルまで高騰し、第三次石油危機を懸念する声まで出ている。原油高騰は需給のひっ迫が主因だが、投機資金が「悪者」としてやり玉に上がり、各国当局が規制強化の動きを見せている。価格を引き下げ、石油消費量を維持したい思惑が込められているのは明らかだ。その一方で、地球温暖化対策の柱として二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けた国際的議論も本格化している。原油の高騰は消費抑制を促すのだから、CO2排出削減の近道という側面もあるはずなのだが…。

◆生き残りをかけた努力

「現在の相場水準は異常だ」―。日本と米国、中国、インド、韓国の5カ国は6月7日に青森市でエネルギー相会合を開催し、原油高騰に深刻な懸念を表明した。共同声明で「途上国に大きな負担をもたらす」と指摘し、これと軌を一にする形でインド西ベンガル州で石油価格引き上げに抗議するゼネストが発生。日本でもガソリン価格が高騰するなど庶民や産業界に影響が広がっている。

こうした事態を受けて、経済産業省の北畑隆生事務次官は、原油高騰の原因の一つに挙げられている先物相場への投機資金流入に関して、「何らかの規制があるべきだ」と強調。米国でも規制の検討が進んでいるが、投機による価格高騰は永久に続くはずがなく、いずれは需給に基づく価格に収れんする。

適正価格は市場に聞くしかないが、今回の高騰が起きる前の水準である1バレル=20〜30jに戻る可能性はないだろう。中国とインドが経済成長の軌道に乗り、GDP(国内総生産)が急激に上昇。これと連動してエネルギー消費が増えているのだから、需要拡大により世界の原油価格がかつてと異なるレベルに上昇するのは避けられない。

原油価格の高騰が様々な歪みを生むのは間違いないが、過去2度の石油危機で日本は省エネやエネルギー利用の効率化で世界をリードする技術を開発した。地球レベルの課題となっている今の環境問題などは念頭になく、ただ、生き残りをかけて必至に技術開発に取り組んだ結果だった。

◆新たなプロセス

企業は利益を上げるのが第一目的で、少なくとも潰れる事態を避けようと最大限の努力をする。現在、地球温暖化対策として脚光を浴びているCO2排出量取り引きは、排出量を削減してその分を売却し、利益を上げることができる。利益追求という企業本来の行動原理をベースにしてCO2を削減する枠組みで合理的なように見える。

しかし、現実的だろうか。排出量の取り引きを始める前に、個別企業の排出枠を決めなくてはいけないが、その作業は至難の業だ。

日本の最先端工場と途上国の老朽化した工場では、エネルギー利用効率が天と地ほど違う。最先端工場でのさらなるCO2削減は困難を極め、老朽工場の排出削減は容易なのだが、途上国は先進国の責任を声高に叫び、自らの排出量削減に消極的なのが実状だ。

先進国と途上国で利害が衝突するだけでなく、一つの国の中でも産業別、企業別に利害の対立が必至。地球温暖化防止に向けてすべての国や企業が参加する公平で効率的な排出枠が決められるとは考えにくい。

これに対して原油の価格メカニズムは、CO2排出量に与える影響が直接的で極めて分かりやすい。価格が上がれば誰もがエネルギーの使用を控えるだろうし、産業界は過去2度の石油危機と同様、効率的な利用に向けて革新的な技術開発を余儀なくされ、実現にまい進するしかない。

原油価格が今後、劇的に下落するのは期待出来ないとすれば、高騰した価格を前提にして人々の生活や経済・社会の仕組みを新たに構築するプロセスこそが、地球温暖化を防止するための最短の道だとの視点があってもおかしくはない。


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