![]() つくばウエルネスリサーチ 代表取締役・久野譜也さん |
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五輪ファイナリストの贈り物
事の始まりは、一九九二年バルセロナオリンピック直後の事だった。陸上400メートルのファイナリスト、高野進が、その画期的な筋肉研究法の評判を聞きつけて、筑波大博士課程在学中の久野のところに測定にやってきた。筑波大付属病院に初めて設置されたMRI(磁気共鳴画像診断装置)は、当時一台八億円。このマシンを自らの手で駆使し、『筋肉研究』を極める事の重要性を直感した久野は、体育研究科の修士号を取得した後、医学研究科の放射線科博士課程に編入していた。与えられた時間は、診療外の夕刻五時半から翌朝八時半まで。 強靱な高野の体躯を、最新のMRIで輪切りにして撮影していったら「この筋肉、何て名前?」。通常、直径一aのところ、高野は直径三a。早く走ることのキーだった。国内トップクラスの筑波大の学生と世界的レベルの高野の大腰筋では、太さが違う。 それにしても大腰筋とは、一体どこの筋肉なのか。深部筋と言われるこの筋肉は、通常、触ることも見ることもできない。体幹にあり、背骨と両足の付け根を結ぶ、足を引き上げるための筋肉。これまで、大腿部だけを対象にしてきたが、「豚カツでいうと、ヒレ肉に当たる部分。体の奥に隠れていた大腰筋に、スポーツ医学が初めて注目した瞬間だった」と、笑って教えてくれた。そして、高齢者の研究に入った時この大腰筋の機能に着目。「歩くことに深く関係し、寝たきり老人を無くすためのキーポイントになるな」と考えた。 この成果で医学博士となった久野は、東大教養学部の助手を経て、九年前、筑波大に戻ってきた。その時、「僕の問題意識の中に、今までの健康政策がうまくいっていない。失敗であれば、何が失敗であったか。ウルトラCを見つけることがテーマだった。やってみて分かったことは、ものすごくニューなことはない。いろいろの要素をインテグレートしただけ」。 大洋村も当初は、「久野は筑波大の先生」ということで別世界のヒト扱いだった。年五十回通った。泊まれば、お酒も一緒に飲む。現場の担当課長が理解してくれた。筑波大の健康関連の研究会では、NPO設立が良いとの意見が多かった。数カ所の自治体を回った結果、担当者に言われたのは、「例えば、水道事業を考えてください。現場の作業は全部民間でしょう。健康も同じで会社の方が契約しやすい」との担当者の意見で、流れが決まった。 大手企業も現場を持っていないので、マーケティングができていない。政府の『大学発ベンチャー1000社構想』も発表されたし、これからはベンチャーで取り組むのが、時代のトレンドだと確信。まず、「全国を元気にしよう」と、研究成果の全国発信を試みた。 NHK『クローズアップ現代』が、大洋村の成功例を特集してくれた。反響は大きく、ベンチャーの立ち上げ半年前に、七つの自治体と契約できた。「成功例を作れば、次に、注文がくる」。活動現場が、そのままショールームとなっていく。 特許を取れと言われたが、その必要がない。現時点の顧客である二十一の自治体の現場から、随時データが集まってきているので、運動処方のアルゴリズムも日々進歩している。「これで、追いつかれたら、つくばウエルネスリサーチ社の明日はない」と。 失敗しても、筑波大からの給料で食っていくだけは保証されていると言われる。しかし、「今では二十人近いスタッフがいるので、そういう人たちの生活に責任を持たなければないらないワケです。本人は必死ですから…」と、研究も経営も失敗できない。(花山 亘 つくばベンチャー協会事務局長、NPOつむぎつくば理事、敬称略) 【会社概要】つくば市桜1の18の2ウエルスクエアビル2階。電話029・863・5800。2002年7月創業。資本金3995万円。筑波大学と連携して、新しい健康サービス事業を創造。http://www.twr.jp/ | |
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